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活用事例:墨田区立両国小学校 理科

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小学校6年の理科「電気の利用」という授業でMESHを活用し、授業実践をされた墨田区立両国小学校の五関先生に、授業実施の背景やどのように授業を展開されたのかを伺いました。

  • 先生:墨田区立両国小学校 五関 俊太郎氏
  • 児童: 39人学級(3~4人1グループ学習)
  • 場所:墨田区立両国小学校
  • 実施時間: 本時45分、前時45分×12回 (計13回) 

今回の授業を実施した背景は?

 以前クラスの児童に「理科の学習が好きか」というアンケートをとったことがありました。結果は、3割が「どちらともいえない」、4割が「嫌い」と答えたんです。さらに嫌いな理由を問うと、「難しいから」「実験しか面白くないから」といった答えが返ってきました。改めて、理科の楽しさや可能性を味わわせないといけないと、強く感じた瞬間でした。プログラミングの学習以前に、そもそも理科の授業において「謎に向き合い、試行錯誤しながら探求し、そして解決できた時の喜びを友達と分かち合う」そんな理科の本質的な価値を児童に体験してもらう必要があると考えたことがきっかけです。

 また、「理科の学習は役に立つか?」という問いには、3割が「わからない」、そして3割は「役に立たない」と答えていたことからも、日常生活と理科の学習を起点とした科学技術がリンクしていないことにも気付かされました。おそらくプログラミング学習も同様です。単にコーディングなどの手段を覚えるだけでは、その先にある実生活や社会への応用といった学習の先にある主体的な展開に結びつくに至らずに終わってしまうのではないかと。そこで今回の研究授業は、そんな子供たちに問題解決型の学習を通して、理科の学習を好きになるだけでなく、主体的に課題を解決することのやりがいや楽しさを実感してもらうことをねらいとしています。

 

授業テーマはどのように決めましたか?

 本授業は、小学校6年の理科「電気の利用(A  エネルギー)」という単元で実践を行いました。本単元には、「電気の性質や働きについて追及する中で、主体的に問題解決しようとする態度を養う」という目標があり、こちらの内容はまさに私が児童に育みたいと考えていた「問題解決力」に当たります。そして、その実践過程は「電気の性質や働きを活かした道具や仕組みが身の回りにある事を知り、理解を深める学習」を行います。そこで科学技術やプログラミングが世の中に還元されていることを伝えられるとも考えました。

 

この授業のねらい、目標は?

  • 電気の性質や働きについての理解をはかり、観察、実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
  • 電気の性質や働きについて追及する中で、主にそれらの仕組みや性質、規則性及び働きについて、より妥当な考えをつくりだす力を養う。
  • 電気の性質や働きについて追及する中で、主体的に問題解決しようとする態度を養う。

 指導案には上記3点を明記しましたが、やはり一番の狙いは、これらの目標を達成する過程で、児童の頭の中に「もしかしたら、自分たちでも世界を変えられるかもしれない」という気付きを与えることを狙いとしています。アンケート結果からも分かる通り、学習が実生活に結び付いていないと感じている児童がいる中で、いかにこの授業で自信を与えることができるかを私自身の目標にしました。

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MESHはどのように活用しましたか?

 本授業では、電気の性質を理解しながら、その電気をいかに有効活用する仕組みを考案し、実際に開発してもらいました。つまり、児童のアウトプットは、アイデアの発表ではなく、既存学習の知識とプログラミングという手段を活かした「発明」です。プログラミングは学習の主題ではなく、自己有用感を高めるための手段として位置付けています。

 児童に求めるアウトプットのレベルを高めるためには、導入に時間をかけず、アイデアを引き出し、短時間で何度も試行錯誤ができるプログラミングツールが必要でした。昨年もMESHを授業で使い、機材の説明や導入に時間をかけず、児童が直感的に操作できることは知っていたため、今年も授業実践で採用しております。

 今回は、電気の性質や働きを調べた後、「エネルギーを効率的に利用できるシステムを開発する」という目標を設定しました。各グループでアイデア出し合い、開発する案を絞り、そしてMESH使って発明する。7種あるMESHからどのMESHを使うかも、児童自身に選んでもらっています。何を作るか、どのようにプログラミングして開発するかも児童の意思を尊重しています。私からもプログラミングの仕方などは勿論児童に説明していますが、それよりも児童のアイデアが小さく収まらないように、世界のエネルギー問題などの事例紹介をしたりと、今学習していることと世の中の結び付きを伝えることに注力しました。

用意した機材と授業の様子

使用機材素材

MESH

MESH以外

  • 学校内にある身近なモノ、場所(机、ゴミ箱、廊下など)

授業日程

1時間目

  • ウェビングマップを使った振り返り

「電気」に関する学習を振り返る。本単元までに学んだ電気に関する知識をウェビングマップに書き留める。

2・3時間目

  • 電気を作る、ためる、変換する

手回し発電機やコンデンサーを使った実験を通して、気付いたことをグループで伝え合う。気付きの例:手回し発電機は回し続けないと電気はたまらない。コンデンサーに電気を貯めれば電気を使いたい時に使える。電気は光・音・熱などに変換できる。

4時間目

  • 豆電球と発行ダイオードを比べる

それぞれの点灯時間を同じ電力で比較する。さらに電流の量や発する熱についても調査し、予測と実験結果の比較を行う。

5時間目

  • 身の回りで電気が有効活用されているものを探す

電灯・炊飯器・トイレ等、電気が意外にも多く利用されていること、電気がないと我々の生活が成り立たないことをおさえる

6・7時間目

  • MESHについて調べる、体験する

MESHの基本的な使い方を理解するために、実際にMESHを触って、ボタンブロックのボタンを押したら、LEDブロックが点灯する仕組みを作る等、インプットとアウトプットの概念を理解する

8・9時間目

  • MESHを用いた発明の計画を立てる

温度センサーや人感センサーなども使い、電気を有効利用するシステムの発明に向けたアイデア出し、アイデアの絞り込み、開発を行う。意図した動作が行えるように、失敗を歓迎し、何度も試行錯誤させる。

この時に、社会問題を想起させ、児童が主体的にMESHを用いて課題を解決していきたいという願いを膨らませる。それと同時、なぜその発明が必要かを問い続け、発明の背景を明確化させる

10・11時間目

  • 発表の準備

ポスターセッションのためのポスター作製、発表台本の作成、発明品のデモンストレーションの練習を実施

12時間目

  • 発表

各グループ、代表者のみの発表ではなく、必ず全員一人で発表する機会を作る。10グループ分の10カ所の発表場所を作り、グループの4人中1人が発表を行う。他のメンバーは他の班の発表を聞きに回る。

13時間目

  • 振り返り

ウェビングマップに、この学習を通して学んだこと、気付いたことを書き留める。授業の最初に書いた文字の色と異なる色で書くことで、知識やスキルが増えたことをより実感させる。

どんなことを工夫しましたか?

  1. 「願い」をもたせることを大事にしたカリキュラム作り
    児童は勉強すればするほど世の中の事実を知り、時にはネガティブな思考をもってしまいます。どうせ勉強したって、それが世の中を変えることはできないといった思考に陥ることさえもあります。そんな児童のためには、自分でも世の中を変えることができるという自信を与えられる環境設定が必要でした。そのために、普段から世界のニュース、環境問題や防災といった理科や社会の学習と密接に関わる社会問題など、世の中のスケールの大きな課題を様々な単元で児童に問い続けてきました。そうすると、MESHをはじめて児童に与えて「何がしたい?」と問いかけた際に、頭の片隅にあった世界の問題にリンクし、もしからしたら世界を変えることができるんじゃないかと思える発想が少しずつ芽生えます。理科で学んだ電気の既存知識やプログラミングという手段を何に活かせるか?そのための知識の引き出しが用意できるように準備を進めました。
  1. コミュニケーションが生まれる環境構築
    4人1グループで進めつつも、最後の発表は全員に実施させました。しかも、部分的な発表ではなく、必ず1人で1グループの成果を全て発表させました。つまり、計4回の発表の機会を設けています。全員自分たちの班の発表をしなければいけないわけですから、まず自分の班のアウトプットに対して責任が生まれます。それは発表に限らず、発明する仕組みを開発することも同じです。仮に貢献度の少ない児童がいたとしても、自分自身が最終的に一人で発表しなければいけないわけですから、グループ内で自分も発表できるように足りない知識を回収しに行動を起こします。そして、発表の期限も設けているが故に、児童の中で発表までの役割分担が生まれます。プログラミングが得意な子、発表の台本作りが得意な子、アイデアを出すのが得意な子、そんなスキルの差を、「全員発表」という責任を与え、コミュニケーションとコラボレーションをせざるをえない状況にもっていきました。
  1. 国語との連動
    プログラミング以外のスキルについては、この授業の実施前に国語の授業でスキル習得に向けた実践を行っています。例えば意見を出し合う共同作業を円滑進めるために、国語の授業において「アイデアを一つにまとめる」という時間をまったく別のテーマで実施しました。また、プレゼンテーションのスキルについては、この理科の授業の発表直前に、国語の授業で「説得力はどのような要素から生まれるか?」という授業を実施しました。その結果、以前国語の授業でアイデアを一つにまとめられなかった児童が、その失敗を糧に今回の授業ではアイデアをまとめることができ、また発表では児童自ら「例えば、、」といった事例を交えるなど、人に説明するためのスキルを使う様子を見ることができました。

児童が開発した作品

<太陽光で動く電気自動車>
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<廊下を走るとアラームが鳴り、LEDが光る仕掛け>
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※ダンボールで廊下という空間を表現 

  • ウェビングマップの活用

 本授業では、「ウェビングマップ」というワークシートを児童に記入してもらいました。本シートを使うことで、授業前と授業後に自分の理解や学んだスキルがどう変化したかを振り返ることができることを目的に使用しています。

  • 真ん中の黒字が授業実施前の既存知識を書く欄
  • 授業実施後に学んだことや知識を書く欄

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 本授業では、電気の既存知識を活用し、それを世の中にどう還元できるかを自ら考え、試行錯誤をすることを狙いとしていましたが、授業後の児童の頭の中には、「試行錯誤の仕方」「仲間との共同作業」「プレゼンテーション」といった体験が印象に残っていました。既存知識を応用する体験を、プログラミングを通して経た結果、行きついた先には電気に関する知識だけではなく、いわゆる21世紀型スキルを習得するための気付きだったように思えます。あくまで授業前と授業後の変化を実感してもらい、自信をつけてもらうために用意したシートでしたが、その期待以上に児童は自ら21世紀型スキルの習得に近づいてくれたようです。

  • 今回授業でMESHを使用された感想えてください

 日本でも学校現場において「21世紀型スキル」を高めることが求められ始めました。21世紀型スキルとは、国際団体の「ATC21s」(21世紀型スキル効果測定プロジェクト)によって提唱されている、21世紀以降のグローバル社会を生き抜くために必要な能力のことです。具体的には、批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション力、コラボレーション力、情報リテラシーなどで、次の社会を支える若者が習得すべきスキルとして提唱されています。文部科学省の告示した学習指導要領が育成を目指す資質・能力も、21世紀型スキルやOECDのキーコンピテンシーなどと重なる点が多々あると感じています。しかし、実際に教科を指導する際には、その教科で教えなければいけない「内容」への比重が増し、21世紀型スキルなどの汎用的スキルを育成する視点がどうしても弱まってしまっていると感じます。

 そんな課題意識をもちつつ、私が実施したプログラミングの授業も、理科の単元の一つである「電気の利用(A  エネルギー)」でした。実施以前は、21世紀型スキルの醸成までを求めず、どちらかと言えば科学のすばらしさや理科の本質的な価値を児童に気付かせ、世界を変えられる力があることを理科とプログラミングを掛け合わせて経験してもらうことを狙いとしていましたが、児童が作成したウェビングマップを見ると、私の期待以上に21世紀型スキルの「イノベーション」や「革新的なアイデア」というスキルに手が届いていたように思います。これは、既存の単元でも教員の工夫次第で21世紀型スキルの醸成に近づけるという気付きが得られました。

 また、授業を終えて今思うことは、MESHを用いたこの学習を、総合的な学習の時間で行うと、より広い視野で学習をすすめられたのではないかということです。私の想像以上に児童のアイデアは無限で、私が設定した理科の枠組みに収めるだけではもったいなかったと振り返ります。もちろん理科と比較した時に、年間計画の調整をより大きく行う必要がありますが、電気の学習との関連が薄くなってしまいがちな、「バリアフリー」や「地域の防災」や「防犯」といったテーマをより積極的に設定し、より身近な課題を解決する力を育むといったメリットがあります。21世紀型スキルの育成には、こういった教科に縛られない課題を児童に投げかけ続けることも必要で、そのためには、既存単元におけるプログラミングの授業化を進めつつも、総合的な学習の時間を活用した新しい授業案の開発に今後も力を入れていきたいと思います。

関連リンク:

ワークショップの運営マニュアル – MESHサポート | 遊び心を形にできる、アプリとつなげるブロック形状の電子タグ