IoTによって日常を豊かにする経験をデザインする
(油井 千佳子「雨の日に必要な傘をお知らせ」,小谷 菜津子「洗濯にワクワクを」,白木 理子「はぐねこのいる生活」,柴田 翔太郎「ある朝の出来事」,上田 昂輝「IoT × ハチ公物語」)
今回、MESHを取り入れたゼミを実施した「多摩美術大学情報デザインコース 吉橋ゼミ」に、授業設計の背景や、実際にどのような授業が展開されたのかを伺いました。
- 主催:多摩美術大学情報デザインコース 吉橋ゼミ
- 参加者:前期8名、後期9名(大学3年生)
- 開催場所:多摩美術大学
- 実施時間:前期と後期それぞれ15週間
今回の演習を設計/実施した背景について教えてください
「『経験デザイン』を学ぶ学生には、『モノや環境と人とのインタフェースをデザインする』という、既存の演習で扱うことのなかったテーマに取り組んでもらいたいと考えました。
MESHや他の連携デバイスを利用して『IoTのある暮らし』という『経験』をプロトタイピングすることで、IoT時代におけるUI/UXデザイナーとしての可能性を考えるきっかけになれば、と考えました。」
このゼミ活動の構成はどんな人にオススメですか?
- あるテーマ(今回は「IoTのある暮らし」)に即した新たな体験をどうUI/UXデザイナーとしてつくりだしていくかを、頭で考えるだけでなく、手を動かしながらつくり、見て、考える場を提供したいと考えている人
- いくつかのプロトタイプを進化させながら実感する場を提供したいと考えている人
このゼミ活動のねらいは?
- 「IoT」時代のUI/UXデザインの可能性を探りながら、モノや環境と人とのインタフェースをデザインすること
- プロトタイプの制作過程でいかに具体的なユーザー経験を描き出せるか、効果的な経験シナリオの伝え方とはどうあるべきかを、試行錯誤を通して学んでいくこと
「用意した機材とゼミ活動の様子」
使用機材/素材 | |
MESH | |
MESH以外 |
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授業日程(学生は週1回集まり、議論したり教員の指導を受けながら、最終回(15週目)の展覧会に向けてプロジェクトに取り組む) | |
1週目〜9週目 |
MESHは5セット用意して、学生同士でツールを共有し合いながら各自プロジェクトに取り組む |
10週目〜14週目 |
(白木 理子「はぐねこのいる生活」,上田 昂輝「IoT × ハチ公物語」) デザインした「経験」をリアルに再現するための環境づくりや小道具を考え、必要なものは自作、または市販のものを活用した
(大島 梨沙「otto!sound」) 経験の表現の品質を高めるために、反応するタイミングやセンサの感度、動作の連携などの微調整も行った 成果物の評価の基準
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15週目 |
期末展覧会 最終提出課題は、ムービー+A3用紙1枚にアイデアを収めたポートフォリオ |
どんな作品が生まれましたか?
平山 ひとみ「酒守り様 日本酒の美味しさを守る付喪神」
小谷 菜津子「洗濯にワクワクを」
ボタンブロックで洗濯開始。
洗濯が終わると、メールに通知。
洗濯機の蓋を開けると、明るさブロックで今日の運勢をお知らせ。
さらに洗濯物を干すときには、物干の人感ブロックが今日のラッキーカラーと運勢のアドバイスをしてくれます。
どんなことを工夫しましたか?
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ポートフォリオを提出
「ユーザーシナリオやデザインの仕組み、その背景にある考えを表現するポートフォリオ(A3用紙1枚)を作成・提出させました。ポートフォリオの中に何をどのように整理して提示するかは自由です。ウェブデザインのようにデザイナーの意図が見える化されるものと違って、IoTが活用された今回の成果物は見えない部分に隠れているデザイン要素が多く、ポートフォリオは重要です。公開イベントの際もムービーの横に各学生のポートフォリオを展示し、デザイナーの意図や工夫ポイントが他者に伝わるようにしました。」 -
ユーザーの情緒を重視
「デザインした『経験』が、ユーザーにとって心地よい経験になっているかという問いや、自らのアイデアをかたちにした成果物への違和感の原因に向き合い、デザイナーとして考えていくことの大切さを強調しました。 ある学生は、その問いに向き合った結果、天気を知らせる声は合成音声にし、「忘れ物ない?」の声掛けは人間の声(録音)で家族や親しい人の声を想定したものにするなど、デザイン面でのさらなる工夫につなげていました。頭で考えるだけでなく、つくってみて、自らユーザーとしての経験を体感し、情緒的な側面を考慮する。その上でデザインをしていく楽しさや大切さを体験することに重点を置きました。」
プロトタイピング時の様子
今回のゼミ活動を主催した感想を教えてください
「今回の演習内容を、UX・UIデザインを学んでいる学生に提供する場は今までなかったため、やってみてよかったなと思います。一方で、『デザインを発想しプロトタイピングしていく』という過程がポイントとなるこの授業の面白さを、授業を体験していない人(自由選択ゼミをまだ履修していない学生)に伝えるのは難しい、という課題も残っています。今回の経験をどう活かしていくかを検討しているところです。」
主催者によるゼミ終了後の発信内容リンク:
前期ゼミ終了後のFacebook上での共有レポート(2016年9月)
関連リンク:
ワークショップの運営マニュアル – MESHサポート | 遊び心を形にできる、アプリとつなげるブロック形状の電子ブロック