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MESHを活用した未来の授業づくり「未来の先生フォーラム2020」開催レポート

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2020年11月23日(祝・月)に開催された「未来の先生フォーラム2020」で、「小学生がプログラミングで地域と身体を拡張する!?~MESHを活用した未来の授業づくりを考えよう」のオンラインセッションが行われました。

担当するのは、千葉大学教育学部附属小学校の小池翔太教諭。前半は、小学校の1年生と5年生に実施した事例などをもとに、MESHの活用法を解説。後半は、参加者同士のブレイクアウトセッションを設け、授業でのMESHの導入や活用などについて、率直な意見が交わされました。 

 

学校教育におけるプログラミング

まずは小池教諭から、参加者がどれほどMESHを知っているかという質問。チャットに書いてもらうと、「名前は聞いたことがある」「購入検討中」「実際に使ったことがある」などの書き込みがあり、MESHを全く知らない人はいないようでした。

「今回のフォーラムに参加されている人は、今年度から小学校のプログラミング教育が必修化されたことをご存じかと思います。教科書にプログラミングが載っているのです。『プログラミングの言語を覚えなきゃいけない』『プログラマにならなきゃいけない』ということではなく、体験することが大切。音楽や体育などと一緒で、ものごとのいろいろな見方を身に着けることが目的です」

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※スライド中のイラストは、「常葉大学教育学部初等教育課程 三井一希研究室」ウェブサイト内の、『プログラミング教育の概要を説明したリーフレット』より引用。https://www.mikazukilab.info/works/

 

小池教諭は次に、「『小学校プログラミング教育』2020教科書クイズ」と題したクイズを参加者に出題。11の教科などが表示されており、「どの会社(出版社)も特定の学年で必ず使う教科に◎」「一部会社(出版社)の一部学年で使う教科に〇」を付けるというものです。

答えは、「算数」と「理科」が◎。「算数」は5年の正多角形の単元で必ずプログラミングを作ることになっており、1~6年の複数の単元で箸休め的コーナーに入っていることもあります。「理科」では、6年の電気の利用で紹介されており、手回し発電で電気をためられるという内容の後に、プログラミングを体験する形となっています。

一部の教科書に掲載されているのは、「家庭」「図画工作」「外国語活動・外国語」の3つ。「家庭」では5年の生活の中に、「図画工作」では、技術の発達と表現の広がりを学ぶ単元で、イルミネーションがプログラミングでできている、といった例が取り上げられています。「外国語活動・外国語」では、道案内の単元で紹介されています。

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多くの教科書に採用されているMESH

教科書の中では、6年の「理科」の「電気の利用」という単元で、MESHを採用しているものが多くあります。

「初めてMESHを見たときに、いろいろなことができそうだと感動しました。プログラミングの概念がガラガラと崩壊して、シンプルに楽しく学べるツールだと思いました。今回紹介する事例の中には、小学校1年生のものもあります。簡単にできるうえ、ロボットプログラミングのように、実際のモノを動かせるのが強みです」

小池教諭が例として挙げた教科書では、駅前の街灯の例が紹介されています。昼間は消灯し、夜になると点灯する街灯には、明るさセンサーが使われているという説明です。MESHを利用してタブレットでプログラミングすると、街灯と同じ仕組みを作ることができます。

「自分が作り手になってみることで、子どもたちの考え方が広がります」

MESHを使ってものをつくるには、「MESHレシピ」のサイトがヒントになると小池教諭は言います。「MESHレシピ」は、まるで料理のレシピサイトのように、MESHのユーザーが作品と作り方を投稿できるサイトです。

話しかけると水をあげてくれる「植物と語りあえる水やり機」や、直方体の箱を動かすと、上側になった面のラベルのとおりに電気が光ったり消えたりする「ライト・コントロール」など、創造力がかきたてられる作品がたくさん掲載されています。

「MESHはもともと教材として作られたわけではないので、これだけ使い方が多様なのだと思います。MESHは『誰もが気軽にプログラミングできる』ように開発されたもの。だから、6年生の理科の単元だけではもったいないと感じています。生活を広げられるアイデアを加えれば、さまざまな授業に活用できるのではないでしょうか」

教材であれば、使い方は該当の教科を教える使い方に特化されますが、MESHは教材ではなくツールとして開発されたため、使い方はアイデアしだいでいかようにも広げることができるのが特長です。

 

5年「総合的な学習の時間」と1年「体育」に活用

小池教諭はMESHを活用した授業のうち、まずは5年生の「総合的な学習の時間」の「地域を拡張する」にMESHを使った事例を紹介。小学校の近くにある中華料理店の店主と、地域コーディネーターの協力を経て作った「商店街の飲食店の課題をプログラミングで解決しよう!」という授業です。

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でき上がったのはこんなプログラムです。

お店の各テーブルに呼び出しボタンを設置し「注文をするときに1回ボタンを押してください」と説明書きをしておきます。ボタンを押すと、料理長が気づきやすい場所のランプが光る仕組みです。同時に、設置しているiPadから音声も流れます。

「授業づくりのポイントとしては、先に学校の中で成功体験を積むようにしました。小さな扇風機を利用して、ボタンを押したら付くだけでなく、温度が高くなったら自動で付く仕組みを作りました。『未来の扇風機が作れた』と成功体験を積むことを第一ステップとしたのです」

その後で、小池教諭が予め一人で中華料理店を訪れ、店主にMESHを体験してもらい「すごいね、うちのお店でもやってもらいたいな」とのコメントを得ます。その声を子どもたちに伝えて「みんなどうする?」と聞くと、子どもたちが自主的に関わりたいと考えるようになるそうです。

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「高学年になると『PCキライ』『プログラミングは苦手』と言い出す子どもも出てくるので、『地域のために何かしよう』という大義だけでは動きづらい。小さな成功体験を積んだ後、ニーズに触れることによって、主体的になれます」

もう一つ紹介されたのは、1年生の体育の授業の例。ダンスをすると帽子に付けたMESHが光るというプログラミングです。

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まずは体育で「リズムをかんじておどろう」というダンスの授業をします。また、別の授業で「MESHをつかってあそぼう」というプログラミングの授業を楽しむ。「動くと光る」という仕組みを知った子どもたちが「ダンスでもできるのではないか?」と気づく、という仕掛けです。

「体育の教員と、僕とで力を合わせて、子どもたちに気づいてもらうようにしました。授業をつくるには、こういうところがポイントだと考えています」

このように、教科書には掲載のない教科などでも、MESHを使ったプログラミングの授業づくりが行われています。

 

MESHを活用した授業をデザインしてみよう

セッションの後半は、参加者をいくつかのグループに分け、MESHを活用した授業アイデアを話し合う時間となりました。

25分ほどのセッションを終えた後、各グループにキーワードを発表してもらったところ、さまざまな意見やアイデアが出てきました。

「教科ごとに閉じるのではなく、例えばすべての授業で『この授業でMESHを使うならどうする?』と考えられる、文房具のような存在になるといいのでは」といったアイデアが登場しました。一方で、「ちょっと複雑なことをしようとすると、MESHだけではできないため、他のものと組み合わせるハードルがある」といった課題も発表されました。道具として適材適所で組み合わせられる性質を持つMESHだからこそ出てくる課題ともいえそうです。他に、具体的な授業の実践の例を共有したグループもありました。

「MESHは教材というより、ツールととらえた方がいいと思います。ツールなので、子どもたちのアイデアはぐんぐん広がりますし、秘めた可能性がまだまだあると思います。今回のイベントをきっかけに、『MESHは自分が楽しい』だけでなく、『誰かのためになる』アイデアを形にしていくような、さまざまなコラボができたらと思っています」

 


小池教諭が紹介した活用事例の詳細はこちら:

活用事例:千葉大学教育学部附属小学校 総合的な学習の時間(5年)
https://blog.meshprj.com/entry/case_el_chiba-u_sougou

活用事例:千葉大学教育学部附属小学校 『体育×ICT』で運動の面白さを拡張させる!(1年)
https://blog.meshprj.com/entry/case_edu_chiba-u-e-1-pe