小学校 理科「電気を効率よく使うためには?」~基本編~

文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き」にてA分類の実践として明示されている「理科:A物質・エネルギー(4)電気の利用」の単元でのプログラミング授業。
筑波大附属小学校の辻 健教諭に小学校6年「発電と電気の利用」の授業で、これまでの理科の学びに、プログラミング教育を取り入れた授業実践を行っていただきました。
今回は『電気をより効率的に使用するためには、どうしたらよいか?』というテーマで問題の解決に取り組んだ事例を、基本編と応用編の2つに分けて紹介いたします。
この記事では『基本編  LEDで電気の有効活用を考える』を掲載いたします。
 
先生  :筑波大学附属小学校 辻 健先生
児童  :6年1組
単元  :発電と電気の利用
実施時間:45分×14回(本時は第10~13時限目)
 

本授業の実践ガイド・ワークシート(PDF)

以下のご利用条件を確認してからダウンロードしてください。

授業の様子

単元目標

発電や蓄電、電気の変換について、電気の量や働きに着目し、それらを多面的に調べる活動を通して、電気の性質や働きについての理解をはかる。実験などに関する基本的な技能を身につけるとともに、電気の性質や働きについて、より妥当な考えをつくり出す力や主体的に問題を解決する態度を養う。

プログラミングをどのように行うのか

『電気をより効率的に使用するためには、どうしたらよいか?』
という問題を解決する過程で、プログラミングが可能なスイッチを用いて電気を有効活用するしくみを実際にプログラミングする。
センサーをどのように活用するのか? どのようなプログラムにしたら電気を効率よく使えるしくみができるか? といった点について、
対話を通して試行錯誤をくり返し、より効率のよい電気の利用の仕方を考える。

単元計画

準備物

MESHブロック、タブレット端末
3~4名のグループごとにMESHブロックとタブレット端末を1セット用意。
ワークシート
個人やグループの考えをまとめる。
 
MESHブロックカードやマグネットシート
プログラミングの内容をグループで検討するための、カードやマグネットシート。
回路用の器具
※プロペラは応用編で使用いたします。
プログラミングスイッチ
MESH を使って、LED やモーターのON/OFFの制御ができる。

参考動画

授業の流れ(第10, 11時)

LEDで電気の有効活用を考える
 

1. 問題の確認を行う

発電し蓄電した電気を、豆電球ではなくLEDに使うことで、より電気を効率よく
使えたことを確認する。その後、さらに電気をむだなく使うためにはどのようなアイデアがあるのか、クラス全体で考える。
 

2. 電気をむだなく使うためのアイデアを考える

学校のトイレの照明や駅にあるエスカレーターのように、人がいるときにだけ稼働し、人がいないときには自動的に停止するといったアイデアをクラス全員で出し合っていく。
教師は、児童の出したアイデアに対し、ほかの類似したアイデアや、生活の中にもそのように動いているものがあることについて投げかけを行いながら、電気の有効活用のイメージを全員で共有できるようにする。
児童のアイデアに対して、「では、明かりをもっと便利に使いたいということだね」といった投げかけを行い、まずは、個人でどのようなしくみをつくると、より効率よく電気を使うことのできる明かり(照明器具)が実現できるのか、LEDを組み込んだ電気回路を使って考える。
ワークシートを配り、上の欄に一人一人が考えを書くように伝える。
〈想定する記述例〉
  • 人が近づくと電気がついて、離れると消える。
  • ドアが開くと電気がつくもの。
  • 玄関の呼び鈴がスイッチになっている
ポイント
まずは、自分で以下のようなことを考えることが大切になる。
  • どのように明かりがつくと、より効率的に電気を使えるのか?
  • MESHをどう扱うかではなくて、自分の理想としている明かり(照明器具)はどのように動くのか?
プログラミングがうまくいくかどうかでなく、発想を生み出すことのほうが重要である。あまりアイデアの広がりは期待せず、どのように明かり(照明器具)を使いたいかについて児童が考えるように声かけをする。
 

3. グループでアイデアを共有し、MESH に慣れる

グループ(3~4人)でプログラミングを通して、各自が考えた明かり(照明器具)が実現できるかについて考える。ここで、MESHに慣れる活動を入れる。
MESH に慣れる活動では、MESH の操作方法についての確認を行う。
MESH に慣れる活動では、MESH の操作方法についての確認を行う。
ブロックとブロックをつなげるだけでプログラミングが可能であることを伝える。
ブロックとブロックをつなげるだけでプログラミングが可能であることを伝える。
どんなブロックがあるのか、それぞれがどんなことができるのかを知る。
どんなブロックがあるのか、それぞれがどんなことができるのかを知る。
 

MESHに慣れる活動

  1. コンデンサー、LED、プログラミングスイッチを導線でつないで回路をつくる。(コンデンサーには手回し発電機を使って電気を蓄えておく)
  1. MESHのボタンブロック、GPIOブロックを配り、電源の入れ方を確認する。各ブロックのアイコン部分を長押しすると、白いライトがふわっと光り、電源のON/OFFができる。短く押すと電源が入っているときは緑色に光ることも伝える。
 
  1. GPIOブロックをプログラミングスイッチの背面に差し込む。アイコンがある側を手前にして、向きを間違えないように慎重に。
  1. MESHのアプリを起動する。「新しいレシピ」を押してプログラミングの画面を開いたら、画面の右側にペアリングされたブロックが並んでいることを確認する。(ボタンブロックとGPIOブロックが並んでいることを確認)
 
  1. GPIOブロックを画面中央に引き出し、設定画面から「電源出力」という項目に合わせ、「オン」になっていることを確認する。次にボタンブロックを引き出し、GPIOブロックとつなげる
  1. これで準備OK。ボタンブロックのボタン部分を押すとLEDが光る
  1. 児童から「でも、先生! LEDを消せません」という声があがることを期待してクラス全員で動作確認を進める。児童が明かりを消すプログラムがないことに気がつくタイミングを見て、「今つくったプログラムは、明かりをつけるだけのものです。先ほどつくったものと同じようにして、明かりを消すプログラムを新たにつくってみましょう」と投げかけ、「オフ」になるプログラムをつくるように指示をする。
 
 

4.グループでどのようにプログラムするか考える

MESHに慣れる活動を終えたら、MESHをどのように使えば3で自分たちの考えた明かり(照明器具)が実現するのか、ホワイトボードとMESHに見立てたマグネットシートを使って、グループで話し合い、プログラムの設計図を作成する。
 

5.プログラムと回路をつくり、動作を確認する

ホワイトボード上で自分たちのプログラムの設計図ができたら、MESHを使って実際にプログラムをつくる。
レシピ例
人の動きを感知したら明かりがついて、人の動きを感知しなくなったら明かりが消える。
プログラムができあがったら、最初に自分たちで考えた明かり(照明器具)となっているか、実際の回路で動作を確かめる。このときに使うMESHブロックは、人感ブロックだけでなく、動きブロックなどを使ってもよい。
ポイント
プログラムがうまくできていても、明かり(照明器具)がつかない場合は、回路がうまくつながっていなかったり、ソケットと電球が緩んでいてつながっていなかったりすることが想定される。ここも児童が自ら確認することが大切である。
ここでは児童が「うまくできた!」という感覚をもてるようにしたい。
プログラムができあがり、人が近づくと明かりがつき、人がいなくなると明かりが消えるということが、MESHや回路を使ってできるようになったら、教師から、この明かり(照明器具)がある場所には、『光が差し込む大きな窓』があることを伝える。 人がいても明るいときには明かりはONにならず、暗いときにだけONにすることで、 さらに電気を節約できるということを児童に想起させるようにしたい。
 

6.大きな窓がある部屋という設定でプログラムを見直す

グループで自分たちがつくったプログラムを見直し、大きな窓がある部屋という設定でプログラムを改善する。
このとき、明るさブロックが使えそうだと気づいた児童の意見をとり上げて、クラス全体に伝える。明るさブロックではどんなことができるのかについては、教師から伝えてもよい。
プログラムの改善は、まずはホワイトボードで作成したプログラムの設計図をつくり直してから、実際のプログラムをつくり直すようにしたい。
 

7. 完成したプログラムをクラスで共有する

プログラムが完成したら、実際に回路が動くかどうかを確かめる。「人がいても、明るいときには明かり(照明器具)はONにならず、暗いときにONになる」というプログラムができたグループを紹介し演示する。
「人を感知した後に明るさを確認して明かりをONにする」といったプログラム(レシピ例1)や、「人の感知と明るさの条件を同時に満たした際に明かりをONにするプログラム」(レシピ例2)を紹介しながら、目的を達成するには、いくつかの種類のプログラムがあることを伝える。
ANDブロックの存在や、明かりブロックの詳細画面で「明るさを確認する」を選ぶと
人感ブロックの後に明るさブロックをつなげられることなどは、グループをまわりながら伝えるようにする。
 
レシピ例1
人を感知したら、周囲の明るさを確認。暗い場合は、照明をつける。
 
レシピ例2
人を感知し、周囲も暗くなったら、照明をつける。
 

8. 学習の振り返り

最初にグループで検討したアイデアと、実際のプログラムを比較して、できたこと、できなかったことの振り返りをクラス全体で行う。
今回のプログラムでは、人がいて部屋が暗い場合には、自動で部屋を明るくするプログラムを組んだが、例えば、その部屋で電気を消して眠りたいときなどに、電気をつけたり消したりできるようにしたいといった児童のアイデアをとり上げ、プログラミングを通して身の回りの電気を有効活用できる可能性が広がるということが伝わるようにしたい。
 
応用編はこちら